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-1度目はストーリー、2度目はセリフや表情を。素敵なドラマは何度も楽しめる。-


このページは、No.1133 哉子がお伝えします。


★ 第7話 「美羽、その愛と死」 

★☆ ストーリー

「神様にお祈りしてみたら?貴方が人生がついてるかどうか―」
美羽の指が引き金に触れた。

涼のキューに突かれた玉が勢いよく飛び出し、狙い通りポケットインするのを見て妖しく微笑む涼。
続けて狙いを定めたところに、涼宛ての電話が入ったことが伝えられ、涼は受話器を耳にあてた。
受話器の向こうから聞こえる美羽の声は微かに震えていて、柏木を殺したと言葉にするのがやっとだった。
涼は受話器に唇を押しつけ、キューの持ち手で玉を弾いた。
弾かれた玉は、導線をたどるように一直線に転がって、ポケットに落ちた―。

再び西原家を訪れた涼は、倒れたまま微動だにしない柏木を前に顔を歪めながらも、手を押しつけて柏木のまぶたを落とさせた。
そして、ペタンと床に座ったままの美羽に目を向け、その前まで歩み寄り声を掛けた。
美羽は、涼の声にようやく我に返り、取り乱しながら涼にすがった。
涼は美羽の腕をしっかり握って落ち着かせ、通りの向こうにあるホテルに行って硝煙反応を消すために絶対シャワーを浴びるように言い聞かせた。
その時美羽の手の中で携帯電話が鳴ったが、涼は、出ようとした美羽から素早く取り上げ、声をひそめるよう唇の前に人差し指を立てた。

美羽の電話を鳴らしたのは優子だった。
優子は、電話に出られないというカイドメッセージを聞き、あきらめて通話停止のボタンを押した。

誰に何を聞かれてもその場にはいなかった、と答えるように言い聞かせて、美羽を現場から離そうとする涼。
美羽は、涼も一緒に…と泣きつくが、涼の「早く!」と言う強い口調と「大丈夫」という優しい言葉に押されて、心細げに西原家を出て行った。

美羽が去った後の西原家で銃を手にした涼は、リビングに入りソファに座った。
そして、一度は柏木に標準を合わせたが、その銃口をやや上向きにして引き金を引いた。
一瞬の鋭い音を立てて撃ちぬかれたドアのガラスがバラバラと床に落ちる。
それを見ていた涼の脳裏に、銃声とともに青写真のような画がよみがえる。
その画に怯え、思わず銃を引き寄せたが、次の瞬間触れたくないものに変わったそれを、指先で押しやって放り投げた。

西原家に何台ものパトカーが入っていく。部屋の中では大勢の警察官が捜査を進めていた。
ただじっと横たわる柏木に見入る涼へ、1人の刑事が近寄り、涼が殺したのか尋ねてきた。
涼は言葉なく両手を揃えて刑事の前に出した。

パトカーに先導されて涼の乗ったワゴンが西原家を出ていく。
その光景を野次馬に紛れて見ていた美羽は、ワゴンが走り去って行くのを、ただ見つめることしか出来なかった。

翌朝の堂島家に、いつもの朝食を壊す電話のベルが鳴る。
杉田からのその電話の内容に、完三は信じられない様子で声をあげた。

捜査は進み、2発の銃弾の発砲位置が違うことや、建造も使用したはずの銃に涼の指紋しか残っていなかったことが、既に判明していた。
取調室の涼は、その捜査結果を基に、誰か他にいたのでは…と尋ねられたが、時折笑みを浮かべながら重い口を開いた。
「カツ丼とか食べさせてもらえないんですか?」
それまで穏やかな口調で問いかけていた刑事は、涼の言葉を聞いた途端、机を叩いて激昂するのだった。

事件の様子を語るTVに見入る同僚から離れているものの、優子は気になって仕方ないような様子で目を向けていた。
電話が鳴ると即座に席を立ち、電話に出る優子。完三からだった。
完三からは、下手に動かずじっとしてろ、と指示が飛ぶ。
どうして、と問う優子に、完三は、下手に動くとようやく姿を見せた悪魔の餌食にされる、と答えた。

美羽は、柏木殺害のニュースを語る新聞を何紙も広げて、ただ窓の外を見つめるだけだった。

鉄格子の中で、涼の脳裏にいくつもの青写真がよみがえる。
西原家で銃を撃った時と同じように、一枚ごとにバラバラによみがえる青写真に、何度か目を細める涼。
そして、青写真は、記憶の映像となって回り始める。
パズルのピースを合わせていく子供の手。手の持ち主である男の子が銃声に反応して顔をあげる。
ふすまを開ける男の子。蒸気を吹き上げるヤカン。回り続けるカセットテープ。銃の影。
男の子はふすまを開けた向こうでうつ伏せに倒れている誰かを見て叫んだ。
「お父さん!」―頭の中に響いたこの声で現実に戻った涼は、悪夢を見たように怯えて、ひざを抱えた。

静かな朝の光が差し込む美羽の部屋には、美羽本人の姿はなく、1枚の手紙がテーブルの上に置かれていた。
『本当のことを、ここに書きます。
 柏木さんの事件の犯人は、私です。
 軽蔑され、侮蔑の言葉を浴びせられ、私は、彼を憎みました。
 彼から、自由になりたかったのです。だから、私は柏木さんを撃ちました。
 片瀬涼さんには、何の罪もありません。彼は、私をかばってくれたのです。
 全ては、私のせいです。
 私は、身を持ってそれを証明するために、そして、人を殺してしまった罪を償うために、死を選びます。
 2002年5月21日。
 最後に―涼、あなたは無実です。
 私はあなたを本当に愛していました。そして、今も愛しています』
白いワンピースをまとった美羽は、穏やかな微笑みをたたえ、放たれた小鳥のように空を舞った。

美羽の死の知らせを受けた優子は驚愕の表情でその場に座り込み、完三は突然の悲劇に顔を歪めて行き場のない怒りを目の前にあった書棚にぶつける他なかった。
涼は取調室で頭を垂れた。しかし、うつむいたその顔には、美羽を偲ぶには到底そぐわない微笑みが浮かんでいた。

釈放された涼が警察署を出ると、完三が待っていた。
完三をヒラリとかわして去ろうとしたのに、わざわざ振り向いて、コーヒー1杯を条件に付き合うと言ってのける涼。
そんな涼に苦虫をかみつぶしたような表情でコーヒーを渡し、さらに催促された1本の煙草も渡して、完三は、ようやく話し始めることが出来た。
完三は、涼に、美羽が柏木を撃つように仕向けただろう、と問い詰めたが、涼は軽い笑みを見せて完三をかわす。
それでも完三は、わざと涼が撃ったことにして簡単な現場工作をしても警察が見抜くことや、美羽が本当に自分をかばってくれたと思って自殺することまで計算ずくだろう、と話を続ける。
「煙草…うまいか?」―こう尋ねる完三としばし目を合わせた後、うっすらと笑みを浮かべて涼はうなずいた。
その瞬間、完三は、涼がくわえていた煙草を投げ捨て、胸倉をつかんで涼を立たせ、美羽の死の重さを叫んだ。
しかし、涼は、動揺することなく冷ややかに、完三の指摘は面白いけれど詰めが甘い、と言った。
涼のあまりの冷ややかさに毒気を抜かれたように、完三は、つかんでいた胸倉から手を離した。
そして、自分の意思で涼のために犯罪を犯してしまった人がいても、そうなるように仕向けた涼の行為は犯罪にならない、と肩を落とす。
それでも、証拠はあると言う完三に、涼はそれが何かと問う。
「おまえや。おまえが生きた証拠や。人騙せてもな、自分騙されへんど。
 おまえが一番よう知っとるやろ。おまえの中に、悪魔が棲んでるっちゅうこと。
 おまえな、…人間失格や。」
完三の答えを黙って聞いていた涼は、そのまま視線を落として、コーヒーカップを口元へ運ぶ。
完三は最後に、神様はいつまでもおまえの味方はしないと言って、その場を去っていった。
涼は、完三が去る足音に聞きながら、先ほど完三に投げ捨てられた煙草を拾って再び紫煙をあげた。
完三が言い残した神様の存在を否定しながら、独りたたずむ涼がいた。

優子が美羽の遺したブレスレットを見つめていると、完三が帰宅した。
美羽の初七日の様子を尋ねても力ない返事しか出来ない優子を見て、完三は改めて涼への怒りをあらわにした。

涼が部屋の外で鳥かごを洗っているところへ、優子が訪れた。
洗っていた鳥かごを拭くために無造作に投げたホースから流れ続ける水はまぶしくきらめいて、2人の間を夕陽色に染めた。
部屋に入った優子は、美羽に電話をかけても話が出来ないままになってしまったことを語り、美羽と柏木が死んだのは涼のせいかと尋ねた。
自分が何かをしたのではなく勝手に死んだのだと、さらには人間誰しもいつかは死ぬんだと、涼は感情のない声で答える。
それに反して優子は、よくわからなくて死ぬのはいや、ちゃんと生きたい、と強い意思を見せた。
涼は優子の言葉にうなずいて、あんたは世界が終わっても生き延びると断言した。
ゴキブリみたい、と少し不満げな声を出す優子を、涼は密かに笑った。
そして、ソファから腰を上げた涼は、旅立つ前に小鳥を逃がそうと指に乗せて窓辺に向かったが、人に飼われていた鳥は野生では生きていけないと言う優子に「預かって」と手を伸ばし、歩み寄り涼の手に触れた優子の指に小鳥をつたわせた。
優子に小鳥が渡ったことを確認した後、断りを入れてから優子の前にひざまづき、優子の腰を引き寄せて顔をうずめた。
優子を抱きしめ孤独への不安を吐露しながらも、どんな自分でも受けとめてくれるだろう優子の姿に安心したように、涼は抱きしめるその腕に力を込めた。
優子は、愛おしいものを包むように優しく涼の首に手を回した。

涼は西原家の財産目当てで美羽に近づいた。でも彼女が家を捨てると言い出して価値がなくなった。
だから彼は美羽をうまく誘導して、柏木を殺させた。
三田の女子大生の事件は、涼が殺された女子大生と付き合っていたが、親が借金だらけと分かり邪魔になった。
で、自分の女である由紀に女子大生を殺させた。
以上、杉田の推理であるが、完三は首を横に振り、涼が全ての元凶であり由紀に人殺しは出来ない、と言及した。
由紀へのこだわりように、勘ぐって好きなのかと探りを入れる杉田。
完三は、笑い飛ばしてコンピュータルームを出ていった。

鳥かごを持って帰ろうとする優子に、涼は、戻ってきたら連絡することを約束として口にした。
けれど優子からは、似合わないから約束しなくていい、という言葉が返ってきた。
自分自身を思い返すようにうなずいた涼を少しの間見つめて、優子は家路についた。

裕希がバイトするバーで、由紀はお酒を欲しがっていたが、裕希がそれを止めていた。
涼の所在を尋ねる由紀に、裕希もはっきりとした答えを出せず、いずれ帰ってくると言って励ますしかなかった。
由紀はトレイに乗せて下げられた他の客のグラスにまで手を出したが、止めようとした裕希と取り合いになり、勢い余って椅子から転げ落ちた。
慌てて裕希が駆け寄ると、由紀は、涼がいない寂しさに右のこめかみにできたスリ傷の痛みがあいまって、子供のように泣きじゃくり、裕希を突き飛ばして、そのままバーを出て行ってしまった。

完三と杉田が仕事を終えて日の出署を出ると由紀が立っていた。
ちょっと不機嫌な顔を見せながら先に帰る杉田。
完三は由紀の顔にあるスリ傷に気づき、刑事課に戻って手当てをしながら、涼が姿を消したことを聞いた。
完三は、涼のことは忘れろ、と言った。自分も忘れるから、とも言った。
以前「これから何処にでも行ける」と言ってくれた完三の言葉を口にしながらも、行き場のない自分を嘆く由紀。
完三はもう一度言う。何処にでも行けるし、やり直せる、と。
それでも不安そうな顔を向ける由紀に、正当防衛ではあるものの人を殺めてしまった過去と今こうして生きている事実を告白して、一生懸命生きるようにと強く訴えた。

バス停まで由紀を送った完三は、7分後に来るバスを一緒に待つことにしてベンチに腰をおろした。
由紀は、そんな完三の姿を見て、病院で薬が出るのを一緒に待ってくれたことを思い出し、自分がいつも独りでいて誰かに何かしてもらったことは初めてと語る。
完三は、今までしてもらってても憶えてないだけで独りでは生きていけない、と由紀に優しく語りかけた。

由紀のマンションへ杉田が訪れた。
警察官としてではなく完三を心配する気持ちが杉田を動かしたのだった。
杉田は尋ねる。三田の女子大生殺人事件は、涼にそそのかされて由紀が実行し、涼が自殺に見せかけたのか、と。
由紀は否定した。
完三に聞かれても同じように答えるか、と杉田が重ねて尋ねても、由紀の答えは同じだった。
杉田は胸をなでおろしながらも、由紀を信じている完三を傷つけないで、と念を押して、帰っていった。

預かった小鳥にエサをあげた優子は、ふと火傷の跡に目を向け、涼を思い出しながら空を見上げるのだった。

涼は、電車に乗っていた。木々の緑と、その間から差し込む日の光が眩しい電車に揺られていた。
『僕には、神様はいない。
 誰も、何も、この手に与えてくれなかった。
 凍えた体をくるむ毛布もなければ、孤独な心を抱きしめてくれる人もいなかった。
 それが僕の人生の始まりだった。』
緑に囲まれた駅に降り立ち、橋を渡り、広がる緑の中の道を突き進み、線路をつたい、どんどん緑の深いところへ足を進める涼。
『だから僕は、自分で、神になったんだ。
 そうすれば、何でも、思うようになる。
 それが、唯一、世界が僕の思うようになる手段だ。』
途中、滝の前に腰を下ろして打ちつける水の音にしばし聞き入ったりしながら、険しい山道を登っていく。
『待ってたら、何もやって来ない。誰もやって来ない。星も降ってこない。
 僕は欲しいもの何でも手に入れる。この手に、つかむんだ。』
森はなおも続くが、涼の足取りは少し軽くなり、やがて、教会のような建物の前に着いた。
その建物の前で思い思いに遊ぶ子供たちを見て、涼の顔に微笑がこぼれる。
『ご褒美なんかいらない。愛なんかいらない。
 僕は僕のやり方で、僕の成果として手に入れる。』
建物の中から、子供に引っ張られてシスター姿の老婦人が出てきた。
涼を見つけた老婦人に向けて、涼が”あっかんべー”をすると、その婦人は驚いた表情を見せ、”ほしのこ園”と書かれた門の中に入って来た涼を懐かしげに抱きしめた。
『たとえば、ゲームをクリアするように。
 それが、僕の生き方だ。』

―これは、”ほしのこ園”にいた頃に涼が書いたものだった。
シスターがそれをとっておいてくれたことに感心しながら返そうとしたが、シスターは、神様が2人になっちゃうから持っていきなさい、と微笑んだ。
シスターは、涼が他人をちゃんと愛せるか心配して、人はゲームのコマではなく愛に満ちたものだと説いた。
涼はキリストの前に歩み寄って背を向けていたが、シスターに聞きたいことがあると言って振り向き、こう尋ねた。
「僕のお父さん、どうして死んだの?…本当に交通事故で死んだの?」

優子が部屋で小鳥の世話をしているところに、完三がまた耳かきを探しに入ってきた。
部屋の中を探し回った後、小鳥に興味を示した完三に、会社の友達から預かったと嘘をつく優子。
その時電話が鳴ったことで完三が部屋を出ると、優子は嘘をついた後ろめたさに顔をふせた。
完三が電話を手にして出ようとしたが、寸前で切れてしまった。
着信履歴から掛け直した先は由紀だったが、電話に出た由紀の様子がおかしい。
由紀は、弱々しい声で、嘘をついていたことを謝り、自分が人を殺したことを告白した。
最後に完三の声を聞けてよかった、と微かに笑って横たわる由紀の目の先には睡眠薬が…。
そして、唐突に切られてしまった電話に、事態の重さを察知して慌てて家を出る完三は、夜の道を走りながら、杉田に由紀のマンションの住所を聞き出して、タクシーを捕まえた。
タクシーの運転手に急ぐように頼んで、由紀に電話を掛け直したが、留守電メッセージが流れるだけだった。
意識を失った由紀が手にする電話の子機から、完三の呼び掛けが虚しく響く。
完三は、タクシーの中で、由紀の無事を祈るしかなかった…。


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