いらないものならこわしてしまえ。
それが身上。
そう言ったら。
「最近の子供は皆君のように物騒なのかな」
と盛大に眉をしかめて言われた言葉にむっとしかけて。
いやいや、今はそんな事よりもっと気になる事があるから、と何とか押しとどめる。
だって、どう考えても不思議な事がある。
錬金術の基本は理解・分解・再構築。
わからない事をそのままにしておくなんて、どうしたってスッキリしない。
悔しいけれど、アンタは大人で、それくらいは認めてる。
だから、さあ、教えてよ。
いらないものならこわしてしまえ。
それが、本心。
それが、本当。
だって、必要なものなんて、増やせば増やすだけ身動きが取れなくなっていく。
でもさ、何でかな、と目の前で何故か複雑な顔を見せているオトナに少しだけ首を傾げて見せて。
アンタのことは、こわしたい、と思わないんだ。
なんでかな、ともう一度繰返したら目の前のオトナは、一瞬瞠目したように目を見張って、
それから。
「…それは、私にとっては、喜ぶべきこと、なんだろうね」
云われた言葉は純粋な疑問に対しての明解な答えと言えるべき代物ですらなかったけれど。
それでも、いつも、いつでも余裕で、オトナの顔を崩さないはずのオトコが、余りにも情けないカオで笑っていたから。
なんだよそれ、と思って。
なんだか無性に可笑しくなってしまって、
まあいいか、とか思ってしまった。
ああ、俺はこのオトコに、本当に甘い。
そんなことを思ってしまった自分に、また笑えた。